北アルプス白馬岳主稜[ルートや必要な装備を解説】

どうも、ど田舎はいたついん(夫)です。

カテゴリーにもある『山のコト」、つまり登山ネタはこのど田舎はいたついんの主軸のひとつ。(人気ないけど)

前々から「ど田舎はいたついんにも山の記録をアップしたいなーと」と思いつつも、最近はもっぱら引きこもりクライマー。

ブログに上げるほどの山登りはしてませんでした。

それでもなんとか登山のいいネタが見つからないかなーと考えていたときに

ひらめいちゃいました。

今までの山行記録をアップすればいいのだ!!! と。

ということで、過去の記録を引っ張り出してきました。

今回の山行テーマはこちら

<バリエーションルート>
積雪期の【白馬岳主稜】を登る!

です。

2018年4月、ど田舎はいたついん(妻)と登った山行です。

こういった山行記録は、山へ行く時にはかなり重要な資料になるんですよね。

なるべくわかりやすく、紹介できればと思っています。

紹介するのは2018年4月1〜2日の記録です。積雪期の山はその時々によって、環境が大きく異なります。あくまでも参考資料として見てください。

日本屈指の雪稜ルート|【白馬岳主稜】とは?

“>写真ACからの写真(綺麗な写真にルート描いちゃってスミマセン)

上の画像は白馬三山を白馬村から見上げた写真。

白馬岳主稜は麓からでもしっかり確認することができます。

白馬岳から東に向かって伸びるスカイライン(オレンジの線部分)。これが白馬岳主稜です。

この長大で豪快な雪稜を詰めていき、山頂にダイレクトに辿り着くダイナミックな登攀。

白馬岳主稜は日本屈指の雪稜バリエーションルート&クラシックルートと言えます。

ルート概要

出典:YAMAP(ど田舎はいたついんアカウントから参照)

白馬岳主稜は積雪/残雪期限定ルート

冬はラッセルが厳しすぎるし、雪がなくなると薮に覆われてしまうため、わずかな期間にしか適期はありません。

行程は基本的には1泊2日。大まかなスケジュールはこんな感じです。

  • 1日目・・・二股ゲート → 猿倉荘 → 白馬尻 (→主稜八峰周辺)
  • 2日目・・・白馬岳主稜 → 白馬岳山頂 → 大雪渓 → 白馬尻 → 猿倉荘 →二股ゲート

幕営のパターンは2種。
①白馬尻にベースキャンプを立て、テントを置いて主稜を登攀
②主稜の八峰周辺で幕営。テントを担いで登攀
私たちは②を選びました。①は2日目の行程がかなり長くなるので、相当な体力が必要となります。

この行程の総歩行距離は約23km。標高差は約2,000mになります。

ただし、4月後半のゴールデンウィーク期間になると山小屋もオープンし、二股ゲートから猿倉荘までの林道も開通するため、アプローチの難易度はかなり下がります。

しかし、注意すべきは【白馬岳主稜は時期が遅れれば遅れるほど状況が悪くなる】ということ。雪はグズグズに腐り、雪崩の危険性も高まります。主稜に乗るまでもシュルンドが大きく割れて、困難な通過が考えられます。

ここ最近では北アルプスの積雪も大幅に減少しているため、今まで定番だったゴールデンウィークの登攀はかなりシビアになると考えて良いでしょう。

私の感覚では3月中旬〜4月中旬が主稜の狙い目だと考えています。(一般的には4月上旬〜5月上旬が適期と言われていますが、それは一昔前の話と思った方が良いでしょう)

それではルート解説へ入っていきましょう。

【1日目】二股ゲート→猿倉荘→白馬尻→主稜八峰周辺(幕営)

出典:YAMAP(ど田舎はいたついんアカウントから参照)

二股ゲート→猿倉荘

撮影:ど田舎はいたついん(二股ゲートの写真。4月頭から除雪が開始される)

ほとんど場合、この二股ゲートが発着地点となるでしょう。

二股ゲートは【中部電力 二股水力発電所】を北に進んですぐの場所にあり、ゲート付近には車が数台停められるスペースがあります。

ナビは【中部電力 二股水力発電所】でセットすると良いでしょう。

駐車スペースは、バックカントリーの方たちも頻繁に利用しており、週末は埋まる可能性も高いです。早めに到着することをおすすめします。

撮影:ど田舎はいたついん

二股ゲートから猿倉荘までは約片道4.5km。急な登りはありませんが、除雪されていない場合は踏み抜き地獄に見舞われることも。

二股〜白馬尻間はワカンやスノーシューが有効!
基本的には持っていった方が良いです。

撮影:ど田舎はいたついん

猿倉荘の屋根の雪がかわいいですね(笑)

2時間〜2時間半ほどで猿倉荘に到着。

白馬尻へは猿倉荘の左手脇の斜面を進んでいきます。

猿倉荘→白馬尻

撮影:ど田舎はいたついん

猿倉荘から白馬尻までは2.2kmほどの道のり。平坦な道を歩きます。

天気の良い日はまるで白い砂漠を歩いているかのような感覚。

この時も半袖でした。汗だくです。

撮影:ど田舎はいたついん(白馬尻からみた大雪渓)

1時間半ほどで白馬尻に到着。白馬尻は大雪渓の末端部にあたります。

ここは雪崩の危険性が非常に高いので、休憩場所や幕営の選定にも注意しましょう。

幕営する場合は白馬尻小屋のある大雪渓の右岸側(杓子岳側)が比較的安全
リスクヘッジ(危険に対する備え)をしっかり図りましょう。

白馬尻→主稜八峰周辺(幕営)

ここからいよいよ登攀に入っていきます。装備を整えておきましょう。

撮影:ど田舎はいたついん

今回進んだルートはおおよそこんな感じです。

雪がまだ安定していたので、白馬尻から八峰まではほぼ直登で進むことができました。

しかし時期によってはシュルンドが大きく発達し、通過が困難な可能性も。その場合は大雪渓と白馬沢の末端辺りまで回り込んで、登る必要があります。

撮影:ど田舎はいたついん

八峰へ向かって進みます。

撮影:ど田舎はいたついん

徐々に高度を上げていきます。そして、ここが地味に辛い・・・。

写真を撮り忘れていましたが、1、2箇所シュルンドを通過し、緊張を強いられる場面がありました。

場合によってはロープを使う必要もありそうです。この辺りも雪崩に注意。

撮影:ど田舎はいたついん

私たちは八峰の50mほど下部のやや平坦場所に幕営を決定。

八峰稜線上に上がった所にいい幕営場所がありますが、人が多く入っている場合は取り合いになってしまうので、この辺りに設営するのもありだと思います。

【2日目】主稜→白馬岳山頂→白馬尻→二股ゲート

出典:YAMAP(ど田舎はいたついんアカウントから参照)

主稜→白馬岳山頂

撮影:ど田舎はいたついん

2日目は4時に起床。長い1日になります。

朝食を食べてテントを撤収。白馬尻より上にテントを張った場合、テント類を一緒に担いでいかなければいけないのが難点。

ここからはロープを繋ぎ、フル装備でいきます。

撮影:ど田舎はいたついん

主稜上に乗りました。残念ながら踏み跡あり。

ここも幕営適地です。

雪が少ないと、ここから先が藪漕ぎになる場合もあります。

撮影:ど田舎はいたついん

歩き出して間も無く日の出。おはよう日本

撮影:ど田舎はいたついん

朝方は雪もしっかりしまっていますが、こんな場所も通過します。気持ち悪いです。

撮影:ど田舎はいたついん

2,350m付近から。まだまだ先は長いです。

撮影:ど田舎はいたついん

いくつものピークを越えていきます。

もはやここが何峰かもよくわからなくない・・・

撮影:ど田舎はいたついん

主稜の南側には杓子岳が凛々しくそびえます。

画像の左下から伸びるラインは『杓子尾根』。こちらも残雪期限定のバリエーションルートです。

撮影:ど田舎はいたついん

2,800m付近。だいぶ登ってきました。疲労もこの辺りがピークかもしれません。

ど田舎はいたついん(妻)も頑張ってます。

撮影:ど田舎はいたついん(山頂直下から見た最後の雪壁)

上画像は白馬岳主稜の【核心部】とされる、斜度60度の急雪壁です。

ここは大きな雪庇が発達することがあり、状況によっては雪庇を崩して乗り上げる必要があります。その場合は難易度が大きく上がります。

最後のひと登り。気合いを入れて挑みましょう。

鞍部から山頂までは60mロープでは足りません。多くの場合、画像の赤丸部分の露出した岩でピッチを切ります。

撮影:ど田舎はいたついん(ラストの雪壁を登る)

最後の雪壁は雪の状況によって難易度が大きく異なります。

なるべく雪がグズグズになる前に登りたいものです。

ハイシーズン時はここで渋滞になる可能性も。
時間に余裕を持って行動しましょう。

山頂→大雪渓→白馬尻→二股ゲート

撮影:ど田舎はいたついん

雪壁を登り、わずかに左手に進むと白馬岳の山頂に到着。

感動も束の間。爆風によりすぐに下山を開始しました。

山頂からは雄大な北アルプスの絶景が臨めます。

撮影:ど田舎はいたついん

杓子岳、白馬鑓ヶ岳方面

撮影:ど田舎はいたついん

立山、剣岳方面

撮影:ど田舎はいたついん

下山は大雪渓から。雪崩や落石に注意です。

また、大雪渓の上部は斜度も急なため、滑落にも気をつけましょう。

撮影:ど田舎はいたついん

今までかかった時間が嘘のように下山は一瞬。

シリセードをしながら下ってきました。

私はここで外付けしていたアイゼンを紛失しました・・・。
普段は外付けしないのに、なぜかこの時だけ、、、
いい教訓です。

撮影:ど田舎はいたついん

白馬尻にデポしておいたコーラとカルピスで乾杯。

本当にたくさん歩きました。ヘトヘトです。

ここから6.5kmの道のりを帰ります。

撮影:ど田舎はいたついん

白馬尻から2時間ほどでゴールの二股ゲートに到着。

お疲れ様でした!!

下山後は・・・金沢へ!

撮影:ど田舎はいたついん

ここからは山行とは関係ありません(笑)

当時住んでいた兵庫県北部へ帰る道中、金沢で観光をしていきました。

下界は桜シーズン真っ只中。雪の世界にいたのが不思議な感覚です。

撮影:ど田舎はいたついん

金沢名物の『治部煮(じぶに)』。金粉が乗ってます。

うどんと丼を注文しました。うまし!

撮影:ど田舎はいたついん

絵付け体験をしました。このコップは今でも我が家の愛用品。

白馬岳主稜を登るためのポイントは?

悩む
出典:PAKUTASO

白馬岳主稜の登攀を成功させる最大のポイントは

適期を見極めることです。

このルートは雪の状況で難易度が全く異なってきます。そして、人が入れば入るほど状況は悪化していきます。

その年々の雪の状況や天候を見極め、最適な時期を選ぶことが望ましいです。

持っておいた方が良い装備は?

長いルートを歩くことになるので、装備の軽量化も大切です。

以下は今回のザックリした装備リスト(2人分)です。

  • アイスバイル × 2
  • ピッケル × 2
  • スコップ × 1
  • 60mロープ × 1
  • スノーバー × 1
  • デッドマン × 1
  • ハーネス、ヘルメット × 2
  • 120cmスリング × 4
  • 60cmスリング × 2
  • カラビナ × 6
  • 12本爪アイゼン × 2
  • テント一式 × 1
  • シュラフ × 2
  • テントマット  × 2
  • 食料、行動食、バーナー等

一概に「どれがいらない」「どれが必要」というのは判断が難しいです。
好条件であれば、スノーアンカーやロープは必要ないレベル。しかし、山はいつ何が起きるかわかりません。
持っていく装備もしっかり吟味しましょう。

「行ってよかった」と言い切れる!!最高の雪稜ルート『白馬岳主稜』

撮影:ど田舎はいたついん(デポしたリンゴ。妻が嬉しそうにしていました)

「積雪期でおすすめなバリエーションルートない?」と言われたら、私は間違いなくこの白馬岳主稜を推します。

それほどに、”行ってよかった”と思えるルートです。

白馬岳主稜の難しさは、沢山の装備を背負っての長いアプローチ、長大な稜線を登り切る体力、ルートファインディング力、雪上登攀力など、登山の総合的なスキルが求められるコトにあります。

そんな困難があるからこそ得られる体験と目に焼きつく絶景は、決して消えることのない想い出になるはず。

アルパインを愛する人ならば、一生に一度は登ってほしい最高のルート『白馬岳主稜』。

今年の春のビッグチャレンジは、ここに決めませんか?

白馬岳主稜のまとめ
  • 適期は3月中旬〜4月中旬。暖冬&雪不足によりGWの登攀は厳しいと思われる。
  • 長いアプローチと長大な尾根を歩き切る体力が必要
  • 行って後悔なし!アルパイン好きなら一度は行ってほしい最高のルート

私はこの装備を使いました