北アルプス 爺ヶ岳東尾根[ルート&必要な装備を解説]

どうも。ど田舎はいたついんの夫です。

2月中旬、後輩K氏と共に、北アルプスの【爺ヶ岳 東尾根】へ日帰りで行ってきました。

爺ヶ岳東尾根は最初から狙っていたわけではなく、当初はまだ行ったことのない谷川岳(東尾根)へ予定していました。

が、しかし、調べてみると冬の谷川岳の危険区域(一ノ倉沢など)には「谷川岳遭難防止条例」なるものが定まっているようで、12〜2月の登山は原則禁止。(3〜11月の期間も登山の10日前までに警察署に登山届けを提出し、受理されなければならないとのこと)

谷川岳のクライミング開拓期に出来た条例だと思いますが、ちょっと今の時代に合ってないのでは?

条例を無視して行っている方もいるようですが、気持ちいいものではないですよね。

ということで目的地を変更。

【霞沢岳 西尾根】【爺ヶ岳 東尾根】で悩んだ末、後者に決定。

今回の山行テーマはこちら

積雪期限定の人気雪稜ルート【爺ヶ岳 東尾根】を登る!

です。

今回の記録を、なるべくわかりやすく紹介できればと思います。

紹介するのは2020年2月19日の記録です。積雪期の山はその時々によって、環境が大きく異なります。あくまでも参考資料としてご覧ください。

【積雪期限定】数少ない”北アルプスを味わえる”ルート|爺ヶ岳 東尾根とは?

出典:GOOGLE MAP

爺ヶ岳 東尾根は、文字通り爺ヶ岳(中峰)から東に伸びる長大な尾根。

無積雪期は薮で覆われているため、厳冬&積雪期限定の初級バリエーションルートとなっています。

このルートの最大の魅力は、なんといっても『北アルプスの大展望を眺めながらの雪稜歩き』!

南には槍ヶ岳・穂高を代表とする北アルプス南部の山々、北にはドカンとそびえる鹿島槍ヶ岳、そして山頂からは劒岳などの立山連峰を一望できます。

「景色」と「手軽さ」で言えば、ロープウェイで上がれる唐松岳や西穂高岳が人気ですが、このルートには自分の足で歩き切る『達成感』があります。

ルート概要

出典:YAMAP

爺ヶ岳 東尾根は積雪期限定のバリエーションルート

1月〜4月下旬頃までが”登れる時期”ではありますが、雪や天候が安定している3月が適期と言えるでしょう。

2020年シーズンは積雪が少ないため、このままでは4月下旬〜GWの登攀はシビアになるかと思います。

行程は基本的には1泊2日。しかし、日帰りで行く人もいれば、2泊する人もいたりとスタイルも様々。

目的によって、その辺りを選べるのも、このルートならではの魅力ではないでしょうか。

今回私たちは日帰りでアタック。ラッセルの多いハードな山行でした。
ちなみに行動時間は約13時間です。

ルートは

  • 鹿島山荘 ⇄ JP(1,767m) ⇄ P3(1,976m) ⇄ P2(2,198m) ⇄ P1(2,411m) ⇄ 爺ヶ岳中峰(2,670m)

のピストン。

行程の総歩行距離は約13km

標高差は約1,700mになります。

それではルート解説へ入っていきましょう

鹿島山荘(970m) → ジャンクションピーク(1,766m)

出典:YAMAP

スタート地点の鹿島山荘(標高約970m)から、約800mを詰めて、JP(1,767m)を目指します。

ここまでは樹林帯歩き。

今回、JPまでのタイムは3時間15分でした。

鹿島山荘 → 急登取り付き

今回は『日帰り』ということで、前日にK氏と合流し、近くの「大町温泉郷」にて車中泊。

当日は4時半の出発となりました。

大町温泉郷から登山口の「鹿島山荘」までは、場合によってはしっかり除雪されていない可能性があります。

日帰りの場合は、明朝出発になることがほとんどになると思うので、車の運転には気をつけましょう。

下山時に撮影

「鹿島山荘」の道沿いに、車が8台ほど停められるスペースがあり、ここが駐車場となります。

積雪が多い場合は、無理に突っ込むとスタックしてしまう可能性もあるので、4WDの方が安心でしょう。(もちろんスタッドレスorチェーンは必須)

初見だとちょっとわかりずらいのですが、Google Mapで「鹿島山荘」を検索すれば出てきますので、その付近になったら徐行しながら左側を見ていけばなんとなくわかります。

下山時撮影

それでは出発!

まずは駐車場から西へと進み、鹿島山荘の敷地内を通過します。

下山時撮影

鹿島山荘のある「鹿島集落」は、かつて鹿島槍ヶ岳の最も一般的な登山口でした。

この鹿島山荘の「狩野きく能」さんは、”おばば”という愛称で親しまれ、歴史的な登山家を幾人ももてなした有名な方なのだそうです。

敬意を込めて、鹿島山荘の脇を通らせてもらいました。

下山時撮影

そこからすぐに「おばばの碑」が目の前に現れます。碑の左手には「東尾根を経て、爺ヶ岳へ至る」と書かれた看板も。

碑の右側を奥に行くような感じで進んでいきます。

私たちは矢印の方向に進まず、右へと曲がってしまいました。
ノートレース&夜間時は要チェックです。

下山時撮影

「おばばの碑」を奥へと進むと、沢にぶつかります。

沢の左岸(進行方向右側)を歩いてほどなくすると、堰堤が出現。

1つ目の堰堤の右斜面が東尾根への取り付き、超急登のスタートです。(写真の奥に見えるのが2つ目の堰堤)

私たちは正規ルートが掴めなかったので、藪漕ぎをしながら急登を突っ込みました。
結果的には尾根に当たるので心配はいりませんが、それでも体力を温存するためにも正規ルートを見つけておきたいところ。

取り付き(超急登)→ ジャンクションピーク

斜度は45度以上あるでしょうか。

正規ルートを外れてるにしても、なかなかの傾斜。

薄っすらのった雪とその下にある落ち葉でズルズル状態。12本爪アイゼン必須でした。

急登を1時間ほど登ると、尾根に出ます。

DCIM\100GOPRO\GOPR1170.JPG

周囲は少しずつ明るくなり、夜明けが近くになってきました。

写真奥のピークがJP。派生する別の尾根との合流地点(ジャンクション)になっているため、ジャンクションピークと呼ばれます。

標高1,500mあたりで日の出を迎えました。

山の上は曇り空ですが、東の空はいい感じ。

天気も期待できそうです。

取り付き〜JPまでは「親切すぎるでしょ!!」というくらいに、テープでしっかりマーキングされています。

いやはや、感謝感謝です。

徐々に積雪も増えてきて、膝上のラッセルになってきました。

ラッセルは大変ですが、自分たちで道を作っていく感じがやはり楽しいですね。

JPを少し進んだところからJPを振り返る

JPに到着しました。写真中央のピークがJPです。

ここからは絶景の稜線歩きのスタートです!

JP(1,767m) → P2(2,198m)

出典:YAMAP

JPからは3つの顕著なピークを経て、爺ヶ岳へと至ります。

ここからはピンクテープも消えてしまいますが、基本的には全て尾根通しなので、ルートで迷うリスクは少なめ。

ただし、雪の状況によって様々なルートファインディングが求められます。

雪も深くなり、私たちはここでワカンを装着しました。

この区間のタイムは約2時間半でした。

JP → P3

JPには先行パーティーの幕営後があり、そこから先にはトレースが。

どうやら3日前から入山していたらしく、悪天だったのでずっと待機していたとのこと。

「30kg超えてるんじゃないか・・・?」ってほどの重装備を背負った山岳部のみなさんでした。

前日までの荒天により、木々の枝には雪が付き、太陽の光で輝いています。

いやー、癒されます。。。

爺ヶ岳まではまだまだ遠い。

東尾根からみると、中峰よりも北峰の方がなんとなく高く見えます。

ただ、実際に爺ヶ岳で最も高いのは中峰。(北峰は2,631m)

中峰が”ゴール”というのがせめてもの救いです(笑)

P3手前で先行グループに追いつき、ラッセルをいただきました。

P3 → P2

左のピークがP2。

時々踏み抜きがあり、体力を消耗します。

シュカブラが見事!「自然の造形美」というやつですね

P2直下は急な雪壁となります。

ここでワカン・ストックからアイゼン・ピッケルに切り替えました。

今回は心地よく歯が刺さり快適でしたが、状況に応じた対応が必要となります。

K氏いわく「これ以上カリカリだったら恐かった・・・」とのこと。

私は楽しく登っていました(笑)

雪壁を越えて稜線へと出ました。

P2まではあと少し。

P2手前から振り返る。

足にも鈍い重さが出てきました。

いよいよラストパートです。

P2 → 爺ヶ岳(中峰)

出典:YAMAP

P2とP1の間はナイフリッジになっており、このルート最大の核心部と言われています。

P2 → P1

P2から先に進むと難所のナイフリッジが現れます。

距離は400mほど。

山岳部のみなさんはフィックスロープを設置していました。

決して難しくはありませんが、くれぐれも油断しないように。

ナイフリッジの途中からP2を振り返る

ナイフリッジは基本は小冷沢側を歩きますが、状況に応じて矢沢側にも回ったりしました。

左のP1から爺ヶ岳に伸びるスカイラインが綺麗です。

P1直下は比較的緩やかな雪壁。

いよいよ、ラストスパートです。

P1 → 爺ヶ岳(中峰)

P1は白沢天狗尾根と東尾根との合流地点となっています。

調べると白沢天狗尾根から爺ヶ岳へ登攀している記録も。

いずれにしても、こうした看板が立っているということは、昔はそれなりに登られていたルートだったことが推測できます。

P1から爺ヶ岳へと伸びるスカイラインはとても歩きやすいように見えます。

が・・・・

ここからが地獄でした。

前日までの荒天の影響で、山頂直下(2,500m付近)から先は太ももラッセル状態。

ラッセルを交代しながら、少しずつ進んでいきます。

最後の最後にこんな激ラッセルが待っているとは、思ってもみませんでした。
ちなみに8割はK氏がラッセル。
おじさんは疲れ果ててひっくり返ってました。

タイムリミットは13時半。
時計の針はすでに13時を刺しています。

果たして間に合うか・・・?!

爺ヶ岳(中峰)到着!!!!!

幸いにも、激ラッセルは山頂の50mほど下で終わり、なんとかリミットまでに到着することができました。

超絶景!北アルプスを一望

山頂からは立山連峰の劔岳から槍ヶ岳まで、北アルプスを代表する数々の名峰を望むことができます。

ヘトヘトだった体力も、こんな絶景をみたら忘れちゃいます!

鹿島槍ヶ岳は頭を残して雲の中。

登ってきた東尾根を見下ろします。

いやー本当に長かった・・・。

厳冬(暖冬ですが)の北アルプスは甘くないな、と再認識。

さてさて、景色も楽しんだところで下山しましょうか。

なんとか暗くなる前には帰りたいところ。

爺ヶ岳(中峰)→ 鹿島山荘

山頂直下の激ラッセルしたところは下山も大変。

K氏がコロコロ転がっていたので真似してみたら案外楽でした。

P1の直下でゆっくり休憩。

ここで山岳部のみなさんと、ソロの方に出会いました。

それぞれP1にテントを張る様子。

何度も振り返ってしまう景色。

日が傾き、山々も午前中とは違って陰影がはっきりしてきました。

JPにて。

大パノラマもこれで見納めかな?

あっという間に取り付きの超急登に到着。

ここからが爺ヶ岳東尾根、最大の核心部でした(笑)

登りでルートを間違えた取り付きの急登。下山時はもちろん正規ルートを選択しました。

薮はないものの、急な傾斜に加えて、グチャグチャな雪と粘土質の土。

アイゼンの刃も、数歩ごとにダンゴになる始末。

バナナの皮が一面に敷かれているような感覚です。

今日の登山で一番恐怖を感じました(笑)

行動時間13時間。17時半に無事下山です。

お疲れ様でした!!!

温泉がとっても近いのも◎

湯けむり屋敷 薬師の湯

出典:湯けむり屋敷 薬師の湯

鹿島山荘から車で10分ほど走らせたところにある「大町温泉郷」は、日帰り温泉や食事処が整っています。

登り終えてすぐに温泉に有り付けるのは本当にありがたい!!

湯けむり屋敷 薬師の湯の情報(2020年3月時点)

・住所:長野県大町市大町温泉郷
・料金:大人750円 子ども300円
・営業時間:
【7月1日~10月31日】7:00 ~ 21:00
【11月1日~6月30日】10:00 ~ 21:00
※最終受付 20:30
・電話:0261-23-2834

そして、温泉の後の食事はここがおすすめ!

山遊食堂 岳

出典:大町温泉郷

薬師の湯から徒歩30秒のところにある、カジュアルな食堂。

登山だけでなく、スキーやスノボの帰りなどにもおすすめ。

じっくり煮込んだビーフカレーや、ドリア風の焼きカレー、ハヤシライスなどのガツンと食べたいメニューが揃っています。

ちなみに私はここのタコライスがお気に入り。

山遊食堂 岳の情報

営業時間:12時〜24時
休業日:不定休
電話:0261-85-0908

爺ヶ岳 東尾根のまとめ

今回持っていった装備は?

  • ピッケル
  • 12本爪アイゼン
  • ストック
  • ワカン(スノーシューよりワカンが◎)
  • ゴーグル&サングラス
  • バラクラバ
  • オーバーグローブ
  • ハードシェル
  • その他衣類・食料

ロングルートの日帰りアタックなので、装備は軽量化を意識。

慣れていない方がいる場合、ロープ類は確実に持っていった方がいいでしょう。

P2-P1のナイフリッジや雪壁の登下降で必要となります。

幕営適地は?

出典:YAMAP

このルートは尾根が広くしっかりしている箇所が多いため、幕営に適した場所も多い印象。

ちなみに私のおすすめ幕営地はP3。

広々として、かなり快適そうです(またこのルートに行くのであれば、次は泊まりで行きたい)

一度は行ってみんちゃい!爺ヶ岳東尾根!

撮影:K氏

厳冬&積雪期の北アルプスの中でも、比較的難易度が低くいける数少ないルート【爺ヶ岳 東尾根】。

“比較的難易度が低い”といっても、やはりそこは北アルプス。

簡単に登らせてはくれません。

しかし、自分の今まで培ってきた登山スキルを発揮するには申し分ない場所ではないでしょうか。

ある程度いろんな雪山に登り、「チャレンジしたいな」と思っている方、このルート、最高ですよ。

この記事のまとめ

・適期は3月中旬〜下旬
・日帰り〜2泊3日まで、スタイルに応じた山行が可能
・とにかく体力が必要。余裕を持った計画を

さあ、次はどこへ行こうかな。